愛罪
瑠海の態度を冷たく感じたのもただの僕の思い違いで、そんな情けない自分がーー物凄く、嫌になる。
「…したよ。瑠海をひとりにして、出掛けたでしょ」
それでも。
消えない罪悪感を消すために、自分を正当化するために僕は呟いた。
瑠海の方が何倍も大人で、僕はただの頼りない兄だ。
瑠海を突き放すことは心を鬼にして実行出来たのに、彼女に突き放されるのは本当に辛い。
なんて身勝手なんだと自分でも思うけれど、やっぱり僕は瑠海がいないとうまく生きる術すら見出せないみたいだ。
「…けーじさんに会いに行ったってばぁばが言ってたの。だから、大丈夫だったよ」
視線をカーペットへ落として瞬きの数を意味もなく数えていた僕に、瑠海が言う。
ふと瞳を上へ滑らせて彼女を見遣ると、瑠海はドアの隙間をなくさずにドアハンドルから手を離し、ぱたぱたとこちらへ走り寄ってきた。
「ばぁばがお昼ごはん作って待ってるの!行こう?」
ぽふんと腕をベッドに預けるようにして立ち止まった彼女が、首を傾げながら僕を仰ぎ見る。
普段から大人びている瑠海が、今日は一段と大人びて見えた。
「ん、わかった。着替えたら下りるね」
「早くしてね」
うまく笑えたかはわからないけれど、瑠海は僕の微笑にうんと頷いてドアの向こうに消えた。
自然と零れた溜め息はシーツにずしんと落ち、己の不甲斐なさに首を項垂れる。
今日は、もう一度真依子の父親に会うと昨日彼女と話をしたばかり。
冷静な自分でいなければと喝を入れ、僕はベッドから出た。