愛罪
ーーあれから、二年。
雲一つない快晴に響き渡る、涼しげなベルの音。
チャペルの階段には沢山の参列者が笑顔でそのときを待ち、カラフルな花びらの入った小さな籠を手にしている。
「まだー?」
「そろそろかな」
ライトピンクのワンピースを着た瑠海の言葉に、スーツ姿の僕は耳打ちするようにそう返す。
すると、チャペルの扉が豪快に開き、新郎新婦が花びらのシャワーの中を一歩一歩と下りてきた。
「お兄!花びら!」
階段の一番下にいる僕たち。
瑠海は新郎新婦が近づいて来たのを見て、僕から籠を受け取った。
『おめでとう!』と花びらのシャワーを浴びる笑顔のふたりは、やがて瑠海の花びらを被るまでに近づき、僕を見つけた新郎が新婦にこっそり声を掛けた。
「花織ちゃん、後藤さん、おめでとう!花織ちゃんすっごく綺麗!」
「瑠海ちゃん、ありがとう」
少しの時間、足を止めたふたりと会話を交わしたのは瑠海だけで、僕は彼と視線で言葉を交わした。
もともと奥ゆかしく美人な彼女は、純白のドレスがよく似合う。
背が高く爽やかを絵に書いたような彼は、黒のタキシードがよく似合う。
今日は、後藤さんと永瀬さんが無事に式を挙げた記念すべき日。
二年前はまさかふたりの結婚式に呼ばれるなんて、夢にも思っていなかった。
後藤さんとは度々食事に行くほど良い関係を築かせて貰っていて、永瀬さんと交際を始めたと聞いたのは確か一年ほど前だったと思う。
彼は、僕と出会う前から彼女に好意を寄せていたらしく、けれど自分に自信が持てずに一歩を踏み出すことが出来なかったと言っていた。