愛罪
コンビニに寄りたいと言う瑠海と自宅の前にある店に入ると、彼女は僕をお菓子コーナーへと連れた。
「真依ちゃんたちにお菓子買って帰ろ!」
「いいけど」
「何がいいかなぁ」
真剣にお菓子を選ぶ瑠海は、駄菓子のミニドーナツとイチゴ味のチョコレート菓子を持ってレジに並んだ。
会計を済ませてコンビニを出ると、道路を挟んだ向かいのマンションの下に見慣れたふたりの姿。
僕と同時に瑠海も彼女らを見つけたようで、チカチカと点滅する青信号を瑠海に引かれて走りながら渡った。
「真依ちゃんどうしているの?」
瑠海がそう訊ねた、彼女。
相変わらず長い髪はハーフアップにしていて、無地の白いTシャツにスキニージーンズをさらりと着こなした姿。
二年前と何一つ変わらない彼女の一つだけ変わったところは、その腕に息子を抱いているということ。
「おじちゃんがもうすぐ着くみたいだから降りて来たら、コンビニにいるあなたたちを見つけたのよ」
真依子が答えると、瑠海は「おじちゃん来るの!」とぱっと笑顔の花を咲かせた。
おじちゃん。それは雄司さんのこと。
瑠海は、何だか少し妬けちゃうくらい彼のことが大好きなのだ。
「るみ、どなつー!」
喜ぶ瑠海が揺らしたコンビニ袋の音に反応し、真依子に抱かれた風雅が一生懸命に手を伸ばす。
暴れようとする彼を真依子が仕方なくアスファルトに下ろすと、瑠海は取り出したドーナツの封を切った。