愛罪
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無意識に空を仰ぎ見るのは、息をすることと同じくらい僕の生に関与していた。
自分の名前が“そら”だと認識しはじめた頃から、僕は何かあるたび気がつけば遥か昔から存在する分身を見あげていた。
下を向く回数よりも、上を向く回数の方が指折り数えなくとも多いはずだ。
「お弁当、温めますか?」
「…いいです」
グレイのパーカから出した500円玉と引換にコンビニ弁当を受けとり、返ってきた80円を募金箱に落としてコンビニを出た。
頭上には、今にも泣き出しそうな灰色の空が広がっている。
今日はやけに“ソラ”が不機嫌だと、互いが互いを見て嘲笑った。
(……笑ってよ、こういうときくらい)
いつだって、空は僕の気持ちに同調する。
もしかしたら僕が空に同調しているだけなのかもしれないけれど、いつだって空だけはこんな僕の味方だった。