愛罪



「一緒に…?」

「そ。一緒に」



 ゆるく巻きつく僕の腕の中で、瑠海はくるりと振り向いて丸い瞳をぱちくりとしばたたかせた。

 頷く僕を見たあと、祖母へと視線を移す瑠海。



「瑠海、お兄といっしょ…?」

「そうだよ。お兄ちゃんがね、瑠海と暮らしたいって言ったんだよ」



 瑠海の中でも多少の動揺があるのか、祖母の微笑を見てから再び僕を見あげる無垢な瞳。

 きっと喜びもあるはずだけれど、突然一緒に暮らせると言われても実感がわかないのが現状だろう。



 雪のように白い頬をつんつんつついてみると、きょとんとしていた表情がほんの少し和らいだ。



「じゃあ、ママにも会える?」



 花を咲かせるように笑顔を浮かべた瑠海を見て、僕は薄く唇の端をゆるめながら首を横に振る。



「…今、ママは家にいないんだ。お仕事で遠いところに行ってるよ」

「遠いところ?」



 僕の言葉をまっすぐ受けとめ、少しだけ寂しげな色を宿す瑠海の瞳。

 どうか、僕を恨まないでくれ。



 今はただ、そう願うしかなかった。



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