愛罪
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「今着いたよ。瑠海は寝ちゃった。うん、こまめに連絡入れるね。ありがと」
僕のベッドですやすやと眠る瑠海を見つめながら、祖母との電話を終えた。
携帯をサイドテーブルに置くと、ふと視界に入る瑠海との写真。
去年の夏、祖母の家へ母親と瑠海に会いにいったとき、祖母の『家に飾っておきたいから』という理由で、縁側で瑠海とのツーショットを撮らされた。
僕の膝に座り、僕の頬を小さな手で摘む瑠海の笑顔とされるがままの僕。
今より少し幼い瑠海は、カメラを構える母親の姿を見てこんなに楽しそうに笑っているのだろう。
もう一生母親には会えないと知った彼女は、一体最初に何と口走るだろうか。
どんな表情を見せ、僕に何を願うだろうか。
考えれば考えるほど、真実を伝える覚悟が乱れる。
自殺の理由がもし僕に関係していたら、瑠海に何と説明してやればいいのだろう。
(わかんないや…)
自己嫌悪するみたいに髪をくしゃりと触ると、僕はサイドテーブルのライトを消して室内から灯りを消した。
テラスの見えるガラス窓から差しこむ淡い月明かりが、瑠海の寝顔を浮かびあがらせる。