愛罪



 今朝の晴れ間が嘘のように、昼下がりから大粒の涙を流しはじめた翌日の夕方。



 牛肉より豚肉の方が美味しいよと教えてくれた祖母の言葉を信じ、市販のカレールーと野菜、そして豚肉を買いに瑠海と近くのスーパーへ向かった。

 瑠海のおやつや朝のパン、ストックの切れた日用品なども買い揃えて我が家へ帰宅したときだった、携帯が震えたのは。

 着信は、登録外番号からだ。



「…もしもし」

「あやめ警察署、後藤です」



 冷蔵庫に食材を入れてドアを閉じてから着信をとれば、相手は後藤さんだった。

 受話器を通しても芯のある声色は健在で、「どうも」と挨拶をする。



 リビング中央に置かれたネイビーのコーナーソファに座る瑠海をキッチンのカウンター越しに見遣りながら、意識を半分受話器の向こうへ集中する。



「先ほど、二条真依子さんのご自宅へ伺ってきました」

「…行ったんですか。逃げられたら困るとか言ってましたけど」

「そうですね。しかし、快く受け入れて下さいました。あたしも協力したい、と」



 警察も大胆なものだと思案しながら、まな板を取ろうとした動作がフリーズした。

 ――あたしも、協力したい?

 僕が何も返さないため、受話器から聞こえる警察署内の淡い騒音が脳に響く。



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