愛罪
いや、納得はしなくたっていい。
僕だって、一ミリもこれが正解だとは思っちゃいない。
死ぬ他にも、何か手段はきっとあったはずだ。
雲の隙間から時折顔を出す太陽の眩しさを疎ましく思いながら、霊園を出てバス停を目指す。
結局、昨日は瑠海を祖母に預けたまま一夜を過ごした。
あのあと僕は、自ら招いておきながら『用がある』と言って早々に真依子を家から追いだした。
もう、うんざりだったのだ。
真依子は、よくわからない。
絶妙な距離感を保ちながら彼女を探りたかったはずの僕なのに、気がつけば触れられるほど近くにいる。
何も知らないのなら、僕に関わる必要はないはずだ。
償いとでも呼べる態度で僕の苦しみを緩和させようとつき纏うその神経が、読めない。
――真依子が、母親を殺したのか?
何度だって脳裏をよぎった。
けれど、警察は自殺だと判断を下したのだ。
そもそも仮にそれが真相だとしても理由はわからないし、僕が上にいるとわかっていながら、気づかれずに母親を首吊りまで追いこめるのだろうか。
ああ……、もう、わからない。
ずきり、音を立てて頭に鈍痛が走る。
無人のバス停のベンチに重たい腰を預け、僕はそっと眩しい青空を仰ぎ見た。