愛罪
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あのあと、五分たらずでパズルが完成すると真依子はごく自然にうちを出ていった。
まるで詮索されるのを避けるよう、瑠海には人懐っこく別れを告げ、僕には意味深な微笑を残して。
瑠海は、真依子が帰っても楽しそうに彼女とのことを話していた。
『いちごの飴をくれたんだよー』
『お兄はピアノがうまいねって言ってたよ!』
『今度ね、遊園地行こうって!』
僕は黙って頷きながら、彼女の無邪気な笑顔を見ていた。
男の僕じゃない、瑠海からすれば女の真依子は新鮮な存在だ。
祖母みたく歳を取っていなくて、僕みたく血の繋がりもない、同性のお姉さん。
きっと、邪心なんてものは一ミリもなく瑠海は彼女が好きなのだろう。
ただ純粋に、優しい真依子が――。
「ねぇねぇ、お兄ー」
「んー?」
夕飯とお風呂を済ませて瑠海を寝かせるためベッドに潜ると、うつ伏せになった瑠海がくりっとした瞳で僕を見た。
だから真似をするように僕もうつ伏せになると、彼女は嬉しそうに笑う。
そんな笑顔が眩しくて、僕も偽りのない微笑を浮かべることが出来るのだ。