愛罪



「真依ちゃんのお兄はね、お星様になったんだってぇ」

「え?」



 とろんとした瞳で僕を見つめる瑠海の言葉に、思考が一時停止した。



(………お星、様?)


 子供に“それ”を説明するときに必ず大人が使う魔法の言葉だ、すなわち、死を意味する。

 僕の脳がその答えに辿りつくのに、対して時間はかからなかった。



「真依子に聞いたの?」

「………」

「瑠海?」



 瑠海は僕の白シャツの裾を掴んだまま、寝息を立てていた。

 父親ゆずりの長く数の多い睫毛が呼吸をするたび上下して、何時間だって見ていられる寝顔を見つめる。



(…亡くなってたんだ、真依子のお兄さん)



 フーガの話になったとき、僕にはそうだと告げなかった彼女。

 兄がいつ亡くなったのか、真相も何も知らないけれど、同情を避けたいがため隠したくなる気持ちはわからなくもない。



 フーガを求めて僕に会おうとするのも、兄の面影を追っての行動なのだろうか。

 真依子の心理は、わからないけれど。



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