愛罪



 けれど、真依子の兄の死を知ったところで僕が彼女を疑う気持ちや警戒する気持ちは消えない。



 でも、同情の種を植えられた心は果たして嘘をつけるか否か。

 というのも、家族を亡くす辛さは並大抵のものじゃない。

 根こそぎ、生きる力を奪われるのだ。

 この世界にはもういない、一生会えない、それに慣れることは容易くても、その哀しみは一生背負っていかなければならない。

 何をしたって、消えてくれないのだ。

 死ぬまで永劫に、死んだ者の姿をときおり思い出しては悲哀と涙に溺れる。



 尤も、僕は涙なんて流さないけれど。



(………調子、狂う…)



 瑠海の寝顔を見つめながら、僕はそっと溜めていた息を吐いた。



 後藤さんからの電話は、真依子のことで話があるとの連絡だった。

 彼も彼で、いろいろと彼女の周辺をあたったりと捜査を続けてくれているらしい。

 少ない手がかりだけで相手をさせて申し訳ないと思うと同時、決して手放してはいけない頼みの綱だと思っている。



 僕の行動にうすうす感づいているであろう祖母が、核心をつかんと僕に何かを尋ねてくる前に。

 僕は瑠海という、両親の残してくれた唯一の家族を抱きしめながら、小さくたっていい、見つけ出してみせる。



 必ずある、母親の残した想いを――。



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