愛罪



 と、そこまで考えたところでふと思う。



 彼女ならありえそうだな、と。

 根拠はないけれど、真依子ならそんなこと容易くやってのけるんじゃないかと思った。

 だからといって、接触があったと断言出来ないのが悔しいところだけれど。



「…お母様が亡くなられた翌日に病院へは伺いましたが、もう一度調査してみますね」



 僕の思案を見抜くようまっすぐな眼差しを注ぎながら、彼はそう言った。

 特に返す言葉もなく頷くと、返ってくるのは青空の如く爽やかな笑み。



「…後藤さん。ひとつ聞いていいですか」



 その笑顔を見つめ、僕は問う。

 彼は快く頷いて、受け身体勢を整えた。



 真依子への感情とは異なるけれど、僕は彼に対してもある違和感を覚えていた。

 それは初対面から既に小さく芽生えていて、現在もその想いは僕の中から消えることをまだ知らない。



 無論、何とも言えぬ『不信感』だ。



 彼は“刑事”という型に嵌っているからこんなに僕に協力的なのだろう、とは思えないのだ。

 どうしても、気になる。



 後藤さんは僕たち兄妹を、まるで――。



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