愛罪
リビングと隣接したキッチンに中身の崩れたコンビニ弁当を置くと、僕は自室へ戻った。
ノックもせずがちゃりとドアハンドルをひねると、見慣れた黒のダブルベッドに眠る彼女の姿。
もちろん、常識なくベッドにもぐっているわけではない(他人の家で勝手に眠る時点で非常識だけど)。
サイドテーブルのイスに座り、上体をベッドに預けて寝息を立てていた。
(……何なの。この人)
覚醒を促すようにわざと音を立ててドアを閉めたけれど、彼女はぴくりとも反応しない。
小さくため息を零してそばまで歩み寄り、後ろから寝顔を覗きこんだ。
サイドに流れた前髪が目許に掛かり、黒いマスカラの絡んだ睫毛に支えられている。
サーモンピンクの薄い唇は無防備に晒され、陶器のように白い肌は驚くほどにきめ細かく綺麗だった。
とはいえ、下品な女性には変わりない(寧ろ、非常識さもプラスされて印象は最悪だ)。
「…持ってきたけど」
「………」
「…ねぇ」
「………」
肩をつついても、彼女が目を覚ますことはなかった。
他人が自分の部屋で眠っている、ということだけでも僕にはストレスだったけれど、自然に目を覚ますまで仕方なく時間を潰すことにした。