愛罪
指先で摘んだ四つ葉をくるくる回す瑠海を見ていると、ふとこちらを見た彼女はこう言った。
「ママにあげるの!」
ポニーテールを微風に揺らし、無邪気に笑う瑠海。
僕を見あげるその姿から視線を逸らすことなく、少し微笑んで言う。
「…そっか。きっと喜んでくれるね」
「うん!お兄のも探してくる!」
瑠海は一旦僕に四つ葉を預けると、ぴょんとベンチをおりて滑り台の奥にある草むらにしゃがみ込んだ。
手のひらの四つ葉。
瑠海から母親へのプレゼントだけれど、これを母親に手渡すことは出来ない。
そっと指を折り曲げて拳を作るよう、僕は瑠海の気持ちを手のひらで包みこんだ。
「お兄っ!」
目を伏せて手許を見ていた僕は、瑠海の弾んだ声にふと顔をあげた。
視線が繋がると、草むらにしゃがみ込んだ姿のまま僕を手招きで呼び寄せる小さな姿。
毎日、色んな顔を見せる彼女には僕も学ぶことがたくさんあって、今でさえその邪心の一切ない笑顔に生きている意味すら感じた。
瑠海がいるから、僕はこの世知辛い世の中を歩いて行けている。