愛罪
「ありがとう」
「どーいたしまして!」
一般的な四歳児より少し体が小さめの瑠海を抱っこしながら言えば、瑠海は僕のシャツを掴みながら笑う。
「帰ろっか」
「うん!おうちに帰ったら、チョコレート食べてもいい?」
「いーよ」
大事に持っていたふたつの四つ葉を瑠海に持たせて、僕たちは無人の公園をあとにした。
交通量も歩行者も少ない比較的静かな住宅街を、瑠海を抱きながら歩く。
彼女は恐らく適当な鼻歌をふんふんと奏で、何だか妙に上機嫌だ。
瑠海は僕には似ず、楽観的で明るかった両親の遺伝子を受け継いだらしい。
女の子はクールな子よりも明るい子の方がどんな場所でも好印象だろう、出来ればこのまま大人になって欲しいものだ。
なんてオヤジくさいことを考えながら表通りに出れば、耳許で瑠海が声をあげた。
「あ、真依ちゃんだ!」
お兄!と僕を呼ぶときのように、甲高く響く嬉しそうな声だった。
足を止めてまさかと振り返れば、一戸建を二軒挟んだ先に彼女がいた。
ラベンダー色の上品なワンピースに、綺麗な栗色の巻き髪。手を振る瑠海に微笑を返す、真依子だ。