愛罪
僕と瑠海の姿を見つけてから立ち止まっていたらしい彼女は、手を振るのをやめた瑠海を合図にこちらへと歩み寄る。
冷ややかに、その華奢な身体を瞳に映す僕。
真依子は、相変わらず何を考えているのかわからない綺麗な瞳で僕を見つめていた。
「こんにちは」
ぴたりと足を止めて、真依子は笑む。
「…くるなら、連絡して」
「あら、どうして?」
“僕が留守のときにまた、祖母に会われたりしたら気がきじゃないから”
なんて、もちろん言えず。
直球な言葉を紡ぐことを躊躇って真依子と視線をあわせていると、僕に抱かれた瑠海が助け舟を出してくれた(本人は無自覚だけど)。
「真依ちゃん、猫のパズル持って来てくれたのー?」
「そうなの。だから瑠海ちゃんに会いに、ね」
きらきらと目を輝かせた瑠海のそれに、真依子は頷いてからちらりと僕を見た。
その視線が何を表したのかは、僕にはわからない。
ただひとつわかるのは、彼女が僕や瑠海と異常なまでに関わりを持とうと目論んでいること。
表面上ではあくまでも“いい人”だけれど、きっとそれは叩いたって割れない頑丈な仮面。
僕だけが知るのだ、真依子が仮面を被って僕たちに会いにきているということを。