愛罪
「お邪魔します」
結局、真依子をうちへ招いた。
無論、招いたのは僕ではなく“真依子を好く”瑠海だけれど。
玄関でおろした瑠海は、黒のパンプスを揃えた真依子の手を取ってリビングへ駆けていく。
猫のパズル。瑠海の目的はそれだ。
(チョコレートより真依子か…)
僕はそんなふたりの背中を見送りながら玄関の戸締まりをして、一足遅くリビングへ向かった。
バッグから出した新品のパズルをあける真依子を、今か今かと食い入るように見つめる瑠海。
僕はその様子を横目にキッチンへ入り、お気に入りの真っ赤なマグカップに冷蔵庫から出した市販のミルクティーを注いだ。
「真依ちゃん、それ耳じゃない!目だよぅ!」
「ん?あら、ほんと?」
カウンター越しに見るふたりは、まるで姉妹のようだった。
僕の入る隙間など、一ミリも見当たらない。
もしも、もしもだ。
僕と真依子が出会った翌日に事件が起こらなければ、この光景もただの微笑ましい景色だっただろうか。
尤も、今更考えるようなことではないけれど。
瑠海が真依子と関わって幸せならば、そっちの道を歩んでいたかったなと少しだけ、ほんの少しだけーーそう思う。