愛罪
何か解決法を、自分を赦せる何かを思案していないと、とてもじゃないけれどふたりを見ていられなかった。
瑠海が純粋無垢な笑顔を向けているこの瞬間も、真依子は何かを企み、神経を研ぎ澄ましているのかもしれない。
僕が彼女を警戒するよう、彼女も僕を警戒している。
これはきっと事実だ。
その証拠に、真依子はちらちらと僕を見る。
横目であったり、瑠海に向けた笑顔のままであったり、意味あり気であったり。
そのたび、彼女は決まって唇の端を小さくあげて太陽の如く暖かく笑むのだ。
(…からかってんの、僕を)
そんな意を滲ませて彼女を見つめるも、ふっとその瞳は僕の姿をはじいた。
まるで、ゴミを捨てるように虚しく。
不快に思って眉を薄らと顰めていると、今まで真依子のことしか頭になかったであろう瑠海の視線がこちらへ移った。
「お兄、今日の夜ごはん、なあに?」
「…オムライスだよ」
気を紛らわすようミルクティーに口をつけてから答えれば、何かを考えるように「うーん」と唇を尖らせる瑠海。
そんな彼女の顔を軽く覗き込んだ真依子が何かを伝えれば、瑠海はぱっと笑顔の花を咲かせて僕を見た。
「真依ちゃんと一緒にごはん食べに行きたい!いい?」
瑠海は、こてんと首を傾げる。
良くない。良くないに決まっている。
けれど、ここで瑠海の嬉しそうな表情を崩す権利が果たして僕にはあるのだろうか。