憑モノ落トシ
「……何か用か?」
犬飼君は私たちを見て、一瞬瞠目したが、すぐにさっきのように眉を寄せ、尋ねた。
とりあえず、トイレの前からアレが消えた時に何かしたのか。
その事について私は聞きたかったのに、先に日向君が口を開いた。
「千代ちゃんはお前なんかに渡さないんだからねっ!」
犬飼君は眉をさらに寄せ、ぽかんとした表情をしている。
きっと今、彼と私は同じ事を考えていると思う。訳が解らない。
「日向君、いきなり何言ってるの。失礼でしょ」
まともな会話を交わした事のない相手にいきなり変な事を言って。
これじゃあ、親しく出来たかもしれないものを、遠ざけてしまうばかりだ。
「いやだってさぁ……なーんか本能的に嫌なんだもん」
むくれてそう言うけれど、失礼さに拍車がかかるばかり。