憑モノ落トシ
「ごめんね、この子他人に馴れていないから」
代わりに謝ると、いや、と軽く頭を振って流してくれた。
「それより、千代、って言うの」
「ええ、今時逆に目立つ名前でしょ?長生きするようにって付けてくれたの」
仲良くなるために、まず話を広げてみよう。
「千年は流石に無理だろうけれど」
そう言って笑うと、犬飼君も小さく笑った。
日向君の持つ印象とは逆に、私はいい人だと思う。
問題の日向君はつまらなそうな顔をしているけれど、もう少し我慢していてもらおう。
「私には兄がいるんだけれど、名前が八千代と言うの」
先に生まれた方により長生きを望んでいるのもおかしな話かもしれない。
けれど、兄は体が弱かったから。
だから女の子の名前を付け、さらに長生きしそうな名前をつけたらしい。
そして体の丈夫だった私には千代と付けた、と。
なんとなくそんな話をしてしまったけれど、どう感じただろう。迷惑だったかもしれない。
ちょっとした心配をよそに、へぇ、と短い相槌の後、犬飼君も喋り始めた。