憑モノ落トシ
「でー、そのワンコが喧嘩相手を事故らせてるんじゃないかって?」
ここまで大人しくしていた日向君が、マジで犬神憑きじゃん。と嬉しさを隠しきれない様子で話に入ってきた。
日向君の好きそうな内容だから仕方がないと言ってしまえばそれまでだけれど、その表情は不謹慎だと思う。
「……ああ」
犬飼君は眉を寄せたが、そこまで気分を害した様子もなく、返事をした。
「誰かと言い争ったりした後、何か……犬みたいな気配を感じるんだ」
「そんで相手が怪我してるからーって」
ワンコじゃないかと思った訳ね、と言う日向君に犬飼君が頷く。
「それで、兄貴の犬――椿をどうにかしてやれないか?」
もし本当に人を事故に遭わせたりしているのなら、きっと椿も本意ではないんじゃないか。
だとしたら、助けてやりたい。解放してやりたいのだと彼は言った。