憑モノ落トシ


「椿、ねぇ……それがワンコの名前なんだ?」

私も茂みの方に何か見えはしないかと思いながら犬飼君の話を聞いていると、日向君がくくっと笑った。



「ねぇ、千代ちゃんも、犬神の作り方って知ってる?」


それはそれは面白そうに、日向君は笑う。
けれどそこにはどこか嘲笑が混じっているようにも見えた。


「前に聞いた気がするけど、忘れたわ」


犬飼君も首を振る。



「犬を首だけ出して埋めて、届かない位置に餌を置くんだ。で、放置するーっと」

手振りを交えて日向君が解説を始めた。


「2日だか3日だかそのままで、飢えたところで餌を近づけるんだ。そしたら犬はどうすると思う?」


「……食べようと必死になるだろうな」

犬飼君に話を振り、彼が答える。



「そー。で、その必死に伸ばした首を、」



切り落とす。


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