憑モノ落トシ
「椿ってさ、首が落ちるから縁起悪いーみたいな話あるよね。そのワンコの名前、ピッタリじゃん」
犬飼君の鋭い視線が日向君に突き刺さる。
何か言おうと開く彼の口を、日向君の言葉が遮った。
「でー、そんな名前つけたのだーれ?」
ハッとしたように犬飼君の目が見開かれる。
お兄さんの犬。
なのだから、きっと名付けもお兄さんがしたのだろう。
「で、居なくなったんだっけー?その事をよく覚えていないと。それはいつ?」
「……6年前」
日向君の質問に、犬飼君が答える。
「じゃあ10歳か11歳?なら、迷子にでもなってたら普通に覚えてそうなもんだし、ペットが死んだのを家族が隠すほど子供でもないよね?
なーんで、覚えてないのかなぁ?」
犬飼君をジッと見据えながら、日向君が問う。
答えを探している犬飼君は無言のままだ。
「何か、ショックな事でも起きたとかぁ?」
「……っ、兄さんだってちゃんと可愛がってたし、そんな事する訳っ」
いつになく意地悪そうな日向君の挑発に乗るように、犬飼君が声を張り上げる。