はなおの縁ー双葉編ー
「そんなことで、いいんですか?」

物とか、何かそういうものを言われると思っていたので少し拍子抜けしてしまった。

「そう、どうですか?」

しばらくあたしは彼を見つめていた。

彼もあたしを見つめている。

その顔はひどく真剣で、それでいて、いやに自信に満ちていた。

まるで、答えがわかっているようで。でも、会うだけなら何の差し障りもないから、いいかな。

「じゃあ、そのときに何かお礼をさせて下さい。」

それを聞いた彼の顔は本当に素敵な笑顔だった。

「、、、よかった。とりあえず、あさってはどうですか?土曜で半ドンだし。」

「はい。よろこんで、、、。」

あたしも知らず、笑顔になっていた。

彼はあたしに自分の傘を握らせ、

「じゃあ、またあさって1時ごろに。手、お大事に。」

そう言いながら、自分は足早に小雨の中を去って行った。

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