はなおの縁ー双葉編ー

「さっき、お店の女将さんが言っていたけど、在所から一人でこちらへ来ているんですか？」

再び歩きながら話を聞いてみる。

「ああ、、、。さっきの話か。一高に受かっても在所から毎日通うのは無理がありすぎるので、こっちで下宿を借りて、そこから通っているんです。」

「失礼ですけど、お里はどちらですか？」

「埼玉の草加です。」

「ええ！！草加なんですか？実はあたしも元の在所は草加なんです。」

これには彼がびっくりしたらしい。辻褄が合わないからだろう。

「え、でも林太郎は生まれも育ちもこっちだと言っていたが、なんだ話が違うなあ。」

「いいえ、兄の話はあっています。、、、。兄とお友達なんですよね、佐脇さんは。兄から聞いていませんか？あたしのこと。」

「気立てが良くて、やさしいいい子だとは聞いたことがあるよ。それになかなかの美人で負けず嫌いだとも言ってたね。」

「そんなこと言ってたんですか？まったくもう、兄さんたら。でも、そのことじゃないんです。、、、、、あたしと兄さん、あの家族とは血は繋がってはいますけど、ほんとの家族じゃないんです。」