はなおの縁ー双葉編ー
「沢さん。」

と、呼ばれて顔を上げると彼の目とかち合った。

「はい。」

目を、反らせられない。

彼はずっとあたしを見つめている。

みつまめの鉢がとても重く感じられて卓に置く。

咄嗟に口をついて出たのは、

「ごめんなさい、おばさんたら口が悪いというのか達者というのか。佐脇さん気を悪くしたんじゃあないですか?あんな変なこと言われて、佐脇さん、困ったんじゃあないですか?」

そう言っている間、あたしは自分で自分を痛めつけているような感じがして、めまいを起こしそうだった。

そして彼の表情は何かに傷ついているような感じがした。

「いや、、、。気にしてないよ。言い伝えは、言い伝えだから。」

その言葉に胸が締め付けられて、かすかに手が震えてしまったかもしれない。

食べかけのみつまめは味が全然感じられなかった。

どうして、彼の言葉ひとつであたしの心はこんなに揺れるのだろうか?

「そう、、、ですよね。言い伝えだもの。ほんとに、気にすることないわ。」

と思い切りの笑顔で答えたつもりだったけれど、この後どう繋げたらいいのかもう頭の中は真っ白だった。
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