はなおの縁ー双葉編ー
「う~ん。障子でも開けようか。」

気分転換に障子を開けた。

爽やかな風と強い日差しが窓から入り込む。

もう初夏である。

少し過ぎれば、梅雨に入るが、それまでの日差しは夏を思わせるほど強い。

「もうちょっと、やろうか。」

そう言って、再び席に着き、本を読もうとしたその時、襖の向こうで男の人の声がした。

「あんみつおもちしました。」

え?あたしそんなの頼んでないわよ?

「よその部屋の間違いじゃあないですか?」

と本を読みながら気のない返事をした。

「こちらへお持ちするように言われたので、入りますよ。」

と同時に襖がさっと開いた。

え?と見上げた瞬間、どれだけびっくりしただろうか。

「えっっ!?さ」

続きを彼が自分の口の前に指を立てて制した。

そして、後ろ手で襖を閉めた。

そう、そこには佐脇さんが立っていた。
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