はなおの縁ー双葉編ー
さっきの蕎麦屋での女将さんとの話を思い出していた。

彼はあたしのことを本当はどう思っているのか。

なぜ、あんなことを言ったのか?、、、、、わからなかった。

そして、あの日の夜を思い出していた。

暗闇の中の口づけ。

知らず、顔が赤くなってしまいそうだった。

おもわず片手を頬に押しやって鎮めようとしていたとき、引き戸の音とともに

「ごめん、ごめん。待たせてしまって。」

と声を掛けられた。

「きゃ!」

飛び上がりそうなほどおどろいた。

そんなあたしに彼も驚いて、

「えっ、どうしたの?何かあった?あれ、顔が赤いけど大丈夫か?」

「そ、そうですか?別になにもありませんでしたよ?」

努めて平静を装って答えた。

「いや、ここの店に置いてある洋書の種類を聞いて書いてきたんだ。君はここに入れないから、参考までにと思って。」

と、書いた紙を見せてくれた。

急いで書いていたせいもあり、少し乱雑にはなっていたが、伸びやかできれいな字だった。
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