過去から熱くなる
帰省して
何年ぶりかで地元の図書館に来た。二度と足を踏み入れたくないと思っていたのに。
「あそこでコーヒーを飲んでるよ」
婚約者の数馬はそう言って、隣接するカフェに入って行った。
数馬は紙の本よりパソコンに触れている方が好きなのだ。

中に入った途端、懐かしさに眩暈がした。
高校生の頃、毎日のようにここに来て愛しい人を待った。
でもある日を境に私はここに足を向けることはなくなった。
今回来ようと思ったのは、数馬と帰省した安心からかも知れない。

私はふいに思い出した。あの新聞記事のことを。
階段を上って資料室に向かう。
眼鏡をかけた女子職員に、六年前の地元の新聞を出して貰った。
やっと見つけた一枚の写真。
新聞をカウンターに運び、奥の職員に声をかけた。
私は息を飲んだ。
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