びーだま
「…ん?杏ちゃん?」

はっとして、隣を見ると、いつの間にかあたしの隣に朔弥が腰掛けていた。いくらベンチとは言え、並んで座るのはなんだかくすぐったかった。

「杏ちゃんは、すぐにぼんやりしちゃうのな?
…どした?なんか…。」


そこまで言っておいて、理由を聞くのを辞めた…。オレが臆病なのか、彼女の傷を抉るのが怖いのか…どちらにしても、臆病者に変わりはないか…。

「…ありがとう。観月さん。」

自分でもびっくりするぐらい、素直に出た言葉だった…。

「………っ!!!」

オレはそう言って向けられた杏の笑顔に…
心を…撃ち抜かれた。反則だ…。その笑顔はやばいだろう。

25の男が、中学生の時以来に、真っ赤になっていた…。

「…杏ちゃんの笑顔…やっと見れた。」

と、自分の口から出た言葉とは信じかたい、シュウが聞いたら笑われるような台詞をこぼしていた…。
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