びーだま
第一章『春』

甘香

煙たくて暗い小さなハコ…。
ここはこの町の唯一のライブハウス━━。


つまんない…うるさい…。
大好きな音楽を聞いても、満たされない。



何をしても楽しくない。

毎日が苦痛で、億劫で…。

同じことを繰り返すだけだった。




誰かと話したくて。

でも━━誰にも会いたくなかった。

矛盾…そんなのは解ってた。



でも、変われなかった。変わろうともしなかった…。


なんだろう…甘い匂いがする。

そんなことを考えながら、ただぼーっとするうちに、その日のライブは終わってしまった。


部屋に明かりがともると、パーティーは終わり。

床にはタバコの吸い殻と、空の紙コップ。

私は甘い匂いの正体を探したがみつからなかった。

友だちに促されるまま、ライブハウスを出て帰路についた。



いつもと変わらない。
そう、変わらないはずだった。あんたがあたしを見つけるまでは…違う…わたしがあんたを見つけたんだ。
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