びーだま
入り組んだビルの奥に、まるて闇に潜むようにその店はあった―…。

『open』

ドアノブにかかるプレートには確かにそう書いてあった。間接照明なのか中は少し薄暗い。

「カランっ…」

ガラス張りのドアを開けると乾いた鐘とも鈴とも違う音が鳴った。店の中には音楽とは言い難い、ノイズが響いていた。

「…洋服屋さん……?」
ぽつりと呟いていた。誰もいない…?
そう思った刹那――――

「いらっしゃーい!」

と、店には似つかわしくない、明るい男性の声がした。
思えばこれがあんたとの出会いだったね…。

…忘れないよ。例え、あんたが私との思い出をdeleteしていたとしても…。

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