【短】悲観的恋愛物語
「俺はありのままの渡辺が好き」


飾りのない言葉を聞いて、涙が溢れる。


あたしの醜い性格も、誰にも言えない過去も全部話したのに…。

それでも、あたしを好きだと言ってくれるの?


「何で泣いてんの?」


ははっと優しく笑った顔は、今までで一番キラキラしてた。


「あたしも、和泉くんの全てが好きだよ」


声を震わせながら、でも力強く言った。

精一杯の笑顔と一緒に。




「……ちょっとこっちきて」


その言葉と同時に腕を引っ張られる。


「い、和泉くん!?」


連れて行かれた先は、奥の本棚の間。


「ここなら人目につかないから…」


そんな声がしたかと思うと、ふわっと温かいものに包まれた。

そこは、和泉くんの腕の中。
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