星空を見あげて
目の前の青年は私の姿に驚いた様子はない。首に巻いているマフラを貸してくれるわけでもない。
冷たいのか、私を馬鹿だと心で笑っているのか、表情からはわからない。それでも。

「今日も眠れないのかい?」

彼の声はいたわりに満ちている。

不眠症で眠れない辛さを、実は彼氏は理解してくれない。睡眠時間が少なくていいじゃん。と、軽く言う。

でも辛いのだ。
眠れないこと。先に寝てしまう彼の寝顔をそっとつついてため息を吐く時間。その時間の長さに耐えられない。

彼の寝顔を見るのは好きなのに。

「星を見るといいよ」

目の前にいる青年が、顔をあげる。白い息が横へ流れていく。

「目を閉じて横になるのが辛いなら」

「星?」

「そう。なにも考えず、ぼおっと。それだけでも脳は休まるよ」

まるで医者のようなアドバイス。けれど私はこの青年の正体を知らない。
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