Sales Contract
深呼吸をして、通話ボタンを押した。
「千絵…?」
呼び出し音が数回鳴ると、心配そうなお姉ちゃんの声が聞こえた。
「あからさまにそんな声出さなくたっていいでしょ?」
「だって…あんたから電話なんて何かあったの?」
呆れた。
らしくないことは、するもんじゃないな。
「何もないから大丈夫。
それより、明日ってあいてる?」
「暇だけど…」
「じゃあ、そっち行ってもいい?
お姉ちゃんに会いたいって人がいるんだけど」
それを聞いて全て察したようだ。
声のトーンがいつも通りに戻った。
「秋本くんね?」
「あたり」
「わかった。千絵も来るんでしょ?」
「うん…一応そのつもり」
「わかった、楽しみにしてる」
その言葉で、今彼女が満面の笑みを浮かべていることは簡単に想像できた。
「じゃあまた明日」
そう言って一方的に電話を切った。