Sales Contract
「結婚は元からする気なんて無いし。
勝也くんには家ができて、あたしは癒されて…それで良いじゃない」
「そんな簡単に片付くもんじゃないの。
秋本くんだって将来があるんだから。
…彼の成長を止めないであげて」
「成長を止めてるわけじゃ…」
無いって言いきれないのが悔しい。
「あと、秋本くんの気持ちに答えられないなら尚更よ」
「勝也くんの気持ち…?」
思い当たる節が無いわけでも無い。
「それはあたしが言うことじゃないから言わないけど…
とりあえず、千絵なりに色々考えてみてほしいの」
勝也くんの気持ちを考えてほしいのはそっちよ
って言いたかったけど、やっぱりあたしが言えることじゃないから黙って頷いた。
それに、今は喧嘩する元気すら残ってない。
「じゃあ、とりあえず言いたいのはそれだけだから。
秋本くんにもよろしく言っておいてね」
「えっ、ちょっと…」
そう言って彼女は早々と出ていってしまった。