Sales Contract
「ただいま」
玄関から勝也くんの声が聞こえたのは電話を切ってから10分後のことだった。
「おかえり」
昨日のことがあったので、少しぎこちなくなるかと思ったけど…
さすが勝也くんだ。
いつもと何も変わらぬ様子で帰ってきた。
勝也くんのそういう所っていいと思う。
「千絵さん、乾杯しよ」
そう言っていきなりワインを渡された。
あたしの好きな赤ワイン。
「時間が無かったからコンビニのだけど許してね」
「いきなりお土産にワインなんて…どうしたの?」
そう尋ねると、彼がなんだか恥ずかしそうな顔をした。
「今日…俺の誕生日なんだ。
1歳だけでも千絵さんに近付けるのが嬉しくて…
だから、一緒に祝ってくれない?」
あんまりにも真剣にそんなことを言いだすから、笑ってしまった。