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「勝也くん、誕生日おめでとう」
グラスにワインを注いで乾杯をした。
深い赤が綺麗。
「こんな風に祝ってもらったこと無いから、人生の中で一番幸せな誕生日かも」
ピザを頬張りながら勝也くんがそう言った。
「大げさだなぁ」
一番なんて言えるのは若いときだけだと思う。
今のあたしには一番なんて、到底決められないもの。
「そうそう、今日は千絵さんに話したいことがあって」
さっきまで何も考えてなさそうだったのに、急にまた真剣な表情になった。
どんなに一緒にいても、やっぱり彼のペースは今だにつかめない。
「いきなり何…?」
ワインを一口飲み姿勢を正した。
「千絵さんに俺のことちゃんと知ってもらおうと思ったんだ」
「…は?」