Sales Contract


渡辺くんの巧みな話術のお陰であっという間に時間は流れた。
バイクがあるから全くお酒を飲まなかったのに…あれだけ喋れるんだから、彼は相当頭がいいんだろう。


あまりに盛り上がったので店を変えようか迷ったが、女性二人は明日も仕事のため、早めに切り上げることにした。


「今日はすごく楽しかったです。
それに…奢ってもらっちゃってすみません。
もし良ければ、いつか秋本とうちまで遊びに来てください」

「ありがとう」


丁寧に挨拶すると、渡辺くんはバイクにまたがった。

「村上さん、お家まで送りましょうか?」


「いいんですか!?」

…あきれた。
下心が見え見えだ。


「それだけ酔われると、一人で帰すのが心配ですから。
それに…千絵さんたちのお邪魔になっちゃいますしね」


渡辺くんの方はというと、真剣に彼女を気遣っているらしい。


「じゃあ、お言葉に甘えて」


村上はあからさまに喜びながら後ろにまたがり、恥ずかしそうに彼にしがみついていた。


「じゃあ、おやすみなさい」


村上がそう言うと、バイクは夜の街に消えていった。

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