Sales Contract
「あたしたちも帰ろっか」
「うん」
月明かりに照らされながら、ゆっくりと駅に向かって歩き出した。
「渡辺くんっていい子ね。
勝也くんが言った通りかっこいいし、礼儀正しいし」
それを聞くと彼は嬉しそうに笑った。
「でしょ?
自慢の先輩なんだ。
でも…」
「ん…?」
「一番の自慢の先輩は千絵さんだけどね」
またこの子は恥ずかしことをさらっと言うんだから…
「あたし、勝也くんが思ってるほどしっかりしてる人じゃないわよ?」
「しっかりしてないのは知ってる。
ここ数ヶ月、近くで見てきてるしね。
そういう所を含めて、自慢の先輩だよ」
「…ありがと」
一気に顔が熱くなる。
恥ずかしいからなのか、お酒のせいなのか。
でも、
悪い気はしなかった。