Sales Contract

家の中は灯りはついてなかった。薄暗がりの中から勝也くんの腕が伸びて来て抱きしめられる。


「おかえり。それにメリークリスマス。
今日は秋本シェフ特製のディナーをご用意したので、リビングまでご案内します」


帰宅早々ロマンチックな展開に笑えてしまった。


「ありがとう。お願いします」


それを合図に手を引かれてリビングに案内される。

いつもの我が家なのに、照明が落とされてキャンドルに照らされてるだけでなんだか別の空間に来てしまったかのような錯覚に陥った。

テーブルの上には美味しそうに焼かれたチキンステーキとサラダとグラタンが並べられている。


「すごい!これ勝也くんがつくったの?」


「うん、一応ね。先輩にアドバイスもらってだけど。はい、座って座って」


料理のいい匂いとキャンドルの暖かさに包まれてついさっきまでの外の寒さはすっかり忘れていた。


目の前のグラスにお気に入りの赤ワインを注がれて、何も言わなくてもあたしの趣味がわかるくらいには2人の時間を重ねたのかと思ってなんだか胸が熱くなる。

「何から何までありがとう」

「いやいや、任せて欲しいって言ったのは自分の方だしね。じゃあ乾杯しよ」

グラスを交わすと心地の良い音がした。

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