Sales Contract
グラスを交わして勝也くんの美味しいご飯を楽しんでいたら、気づくとボトルは空になりわたしもほろ酔い状態になっていた。
そういえば、プレゼントってどのタイミングで渡すものだっけ。
そんなことを考えていると、勝也くんがデザートを取りにキッチンへと向かっていった。
「はい、これクリスマスプレゼント」
そう言って突然差し出されたプレートには、小ぶりのスノードーム型のケーキが乗っていた。
少しクリームにむらがあるけど、とってもおいしそう。
「え、これ勝也くんが作ったの?」
驚きが優ってお礼の言葉よりも前に可愛くないセリフがこぼれてしまった。
「うん、レシピ見ながら作ったんだけど料理以上にお菓子って難しいね。膨らんでくれてよかったけど」
いやいや、あたしより上手いんじゃないかと内心焦ったのは口に出さないでおいた。
「すごい!男の子に手作りケーキプレゼントされるなんて初めて!ありがとう」
やっとお礼の言葉が出てきたタイミングで、今がその時だと思い、ケーキに手を伸ばすのをやめた。
「そしたら、あたしも勝也くんにプレゼント」
先程きれいに包んでもらった箱を取り出し彼に差し出した。
「え!プレゼントなんて用意してくれてたの?」
キョトンとした彼の顔がおもしろかった。この子はあまり人に期待しない子だなと改めて思ったら、そういうところが居心地の良さなのかもしれないと気づいた。
「一応クリスマスなんだから当たり前でしょ。あけてみて」
彼が大切そうにリボンをほどいて箱を開くと、目を輝かせた。
「わー!受験の時に必要だから腕時計欲しかったんだよね、なんで千絵さんわかったの?しかもいい色〜」
嬉しそうに自分の腕に巻いてまじまじと眺める彼がとても可愛らしく思えた。
「気に入ってもらえてよかった。受験の時にお守りで持ってってもらえたらと思って選んだけど、正解だったね」
男性にプレゼントしたのなんて相当久しぶりだけど、こんなにわかりやすく喜ばれたのは初めてかもしれない。