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「こんな年の女が言うことじゃないけど、本当にまともに恋愛なんかしたことないのにいらない経験ばっかり増えてって、今のあたしがまともに恋愛できる気がしなくて。
あたしも勝也くんのこと、男性として好きなんだけど、うまく行くのかなって考えたら認められなかった」
口を開けばネガティブな言葉しか出てこない自分がさらに嫌になった。
せっかくこんなに素敵なディナータイムだっていうのに何やってんだろう。
「そんなことで悩んでたの?
これだけ年の離れた男に言われても説得力ないかもしれないけど、俺だって不安なことはいっぱいあるけどそれよりもお互い好きって気持ちで一緒にいたいって思いが強いからこんなこと口走っちゃっただけ。
焦らすつもりはないし、千絵さんの気持ちが聞けたから満足だよ。
ただ、そう言ってもらえたら千絵さんのプラスの感情もマイナスの感情も受け止めるから、千絵さんもちゃんとぶつけてほしいなって。それにもっと千絵さんのこと知りたいって思ってる」
私の発言とは裏腹に、微笑んでそう言ってくれる勝也くんの優しさがさらに胸を締め付けて気づいたら目頭が熱くなっていた。
「千絵さん?!」
「ごめん、今すごいカッコ悪いから見ないで」
人前で泣くなんて今日のあたしは一体どうしてしまったんだろう。
次の瞬間彼が立ち上がって、細い腕に包まれた。
「見ない代わりに落ち着くまでこうさせて」
「さっきから勝也くんのくせにかっこよくてずるい」
さめざめと泣いてる私のことをあやすように髪を撫でてくれる彼のことが愛おしいと言う気持ちは、もう認めざるを得ないみたいだ。