Sales Contract
かれこれどれくらい経ったんだろう。
彼の体温に落ち着いて、涙はやっと止まってくれた。
「ごめん、ありがとう」
そう言って彼の目を見ると、気恥ずかしくなってきた。
「どういたしまして。こちらこそありがと」
にこっと微笑むと軽くキスをされた。
こんな甘い時間がずっと続けばいいのになんて無謀なことを考えてしまう。
「今日はさ、普段あんまりしないような深い話をしない?
千絵さんのこと知ってるようで、自分の見てないことは何も知らないから、これまでどんな経験をしてどんなふうに今の千絵さんがいるのか教えてほしい。
ケーキも食べながらさ」
触れ合いに流されずにまっすぐ向き合ってくれる彼のことを尊敬した。
「うん、いいよ。そのかわり自分の話をするのは苦手だから勝也くんがききたいことがあれば質問して」
「了解」
そう言ってもう一度頬にキスをすると勝也くんは目の前の席に戻っていった。