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まだあたしが高校生の頃の話になるけど、
お姉ちゃんが彼氏を紹介したいってうちに連れてきたのが初めて春樹と会った時。
その時は正直姉の彼氏なんて全く興味なかったんだけど。
何度かうちに遊びに来て、人見知りなりに彼と当たり障りないことくらいは話せるようにはなったの。

そしたらそれを見たうちの両親が千絵の家庭教師になってって言い始めて。

さすがにそれは余計なお世話とは思ったけど、春樹も喜んで引き受けますなんて言い出すし、親の安心した顔を見たら拒否はできなくて。

最初は普通に勉強を教えてもらってたんだけど、正直成績もそこまで悪くはなかったから別に教師する必要もないじゃんって彼が言い出して、あたしが勉強しながら二人で話すって時間が増えたんだよね。

当時からお姉ちゃんに対してはコンプレックスがあったし、色々彼から彼女との話を聞くようになって。

そしたら関係としてはうまくいきつつも、全く非のないお姉ちゃんに物足りなさを感じてるって言い出して、それを聞いた時になんだかすごくホッとしたのは今でもすごく鮮明に覚えてる。

そこで自分を試してみたいって気持ちと、彼とお姉ちゃんを困らせたいなって思いが生まれて賭けに出てみたの。

個人的に会ってくれませんかなんて何も考えずに言えたのは、今考えると本当に子供だったから許されたことだよね。

まあそれまで話をしてる中で春樹の不真面目な部分もわかってて拒否はされないんだろうなって自信があったからできたんだけど。

そこから個人的に彼と遊ぶようになって、自分がすごく大人になったような気持ちになって、彼といる時間も彼のことも気づいたら好きになってた。

もちろんそんなことは誰にもバレないようにはしてたけど。

関係がだいぶ深くなったところで、あたしの大学進学のタイミングが来て。
地元は離れて東京に行くつもりだったから今後どうするんだろうなんて思ってたら、二人が同棲するって話を姉から聞いたの。

そんな話彼からは全く聞いてなかったからすごく動揺して、これ以上この二人の関係に足を突っ込んじゃいけないなと思って自分から彼とは距離をおくようになって。

環境が変われば気持ちも変わるかなとは思ったんだけど、どうしても忘れられなくて。

その気持ちを引きずりながら大学に入っても社会人になっても自分が関係を持つのは相手がいる人ばっかりだった。

完全に割り切れてなくて笑えるでしょ。

だからこの間春樹と二人で改めて話せた時間はすごく自分にとっては大事な時間だったなと思って。
あの時改めて話せたから、ちょっと前を向けた気がしたし。

そういう点でも勝也くんにはすごく感謝してる。ありがとね。

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