Sales Contract
そうこう話しているうちに、合格発表の1分前になっていた。
急いでパソコンの前に移動して、定刻になったことを確認する。
「心の準備は大丈夫?」
いつになく真剣な横顔に問いかけた。
「うん、ただ手だけ繋いでて」
そう返して、彼が指を絡めた。
これで多少緊張がほぐれるならお安いものだ。
勝也くんが大きく深呼吸をしたあと、マウスに手を伸ばした。
ホームページの合格発表のリンクにカーソルを合わせて、勢いよくクリックする。
受験番号を探すのは彼に任せることにして、そのかわり手を握る力を少し強めた。
「あ……」
必死に数字を探して動く視線が止まったタイミングで、勝也くんが声を発した。
落ち着かない心臓がさらに高鳴る。
「あった!千絵さん、どうしよう。受かってた!あれ、番号間違ってないよね??」
相当自信がなかったんだろう。喜びの前に困惑が出てきて頭の中も感情も処理できていないようだ。
「確認するよ。番号見せて」
彼の手元の受験番号と、彼の指差した画面上の数字を照らし合わせる。
「大丈夫、合ってるよ!
すごい!!勝也くん頑張ったね!」
なぜか喉と目頭が熱くなってきてしまう。
一番感動するのは彼のはずなのに。
「え?え?なんで千絵さんが感極まってるの!俺感情が追いつかないんだけど!」
目が潤む私を見て勝也くんが泣き笑いの表情になった。
「ごめんごめん。そう言うつもりじゃないんだけど…」
頑張って堪えようと思っても自然と涙が溢れてくる。
人のことで嬉し泣きするなんてどうしちゃったんだろう。