Sales Contract


「先に喜ばれたらこっちが喜びきれないじゃん。
でもありがとう、合格したのもだけど千絵さんの意外な一面が見れたのが嬉しい」

優しい笑顔と言葉で心が温まるのを感じた。

彼の手が頬に触れて、堪えても溢れてしまった涙を拭いとられる。

それを合図に彼の背中に腕を伸ばした。
ぎゅっと抱きつきながら頭を撫でる。

「本当にお疲れ様。今日はお祝いしないとね」

「ありがとう。全部千絵さんのおかげだよ」

こんな時でも人への感謝の言葉がすぐ出てくる彼の謙虚さが好きだなと改めて感じた。

明るいうちから抱きついてるのも恥ずかしくなり、そっと体を離してはにかんだ。

「あ、渡辺くんとかお姉ちゃんにも連絡入れなきゃじゃない?」

こういう風に照れると無難な話題に軌道修正する自分の不器用さに少し悲しくなる。
そもそも告白をするムードってどうやって作ればいいんだろう。

「そうだそうだ!先輩に連絡するから、千絵さんは先生に連絡してもらってもいい?」

「わかった、きっと喜ぶと思う」

< 290 / 310 >

この作品をシェア

pagetop