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「後々知ったけど、千絵さんのお姉さん、俺の高校の先生で。千絵さん姉妹にはお世話になりっぱなしだね」

ワインの価値がわかっているのかいないのか、こちらに負けずゴクっと大胆に一口ワインを飲み込んだ後彼が話し始めた。

それと同時に彼の口からお姉ちゃんの名前が出ても、なんの心の痛みも無くなっていたことに気づく。

彼の気持ちがあたしに向いていることに安心しきっているんだろう。
でも勝也くんはどうなんだろう。私がどっちつかずの返事をして、クリスマスの時に話してくれた気持ちはまだそのままなんだろうか。

言いたいことが言えないもどかしさから、変な考えがうかんできてしまう。


「すごい偶然!そんなことあるんですね」

「前秋本から聞いた時に俺もびっくりしました」

村上と渡辺くんが続けて口を開いた。

「あたしも最初嘘かと思った。姉と会ったりするの、実はもともとあんまり個人的に得意じゃなかったんだけど、勝也くんのおかげで関係がよくなったからこっちこそ感謝してるよ」

「別に意図してやったわけじゃないけど、結果オーライかな。こうやっておいしいピザも食べられてるし」

そうやって浮かれながらジョークを言うところが可愛いなと思った。
安堵からか今日の勝也くんはよく飲みよく食べる。
年相応の食欲に少しだけ羨ましくなる。

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