Sales Contract
第14話
勝也くんと恋人になってから初めての日曜日を過ごし、翌朝村上に報告をするために会社の最寄り駅で待ち合わせをした。
駅の改札を抜けるとすぐにあたしの姿を見つけて、綺麗に巻かれた髪を揺らしながら村上がこちらに寄ってきた。
「おはようございます!一昨日はありがとうございました」
「こちらこそ、おかげさまで何年ぶりかわからない恋人ができたよ」
それを聞いて彼女の表情が明るくなった。
「おめでとうございます!よかった〜。いや、うまく行かない訳ないのはわかってましたけど」
足を会社の方に向けながら彼女が話を続けた。
「どうですか?付き合ってから何か変わるもんです?」
「うーん、どうだろう。生活は変わらないけど、気持ち的には安心感がある分2人の空気感が穏やかというか、ざっくり言うといい感じ」
我ながらなに浮かれているんだと内心ツッコミを入れつつ、口角が上がるのは制御が効かなかった。
「何ですかそれ〜!可愛いですね。
私からも一個話したいことがあるんですけどいいですか?」
「ん?どうぞ」
改まって話したいなんて言われると少し背筋が伸びてしまう。
「一昨日の帰り、渡辺くんに勢いで話振ってみたんですけど、私の予想的中でした。
ただ、どうこうなりたいとかじゃなくて、先輩とのことは全力で応援してるとは言ってたんですけど」
「あー…やっぱりそうだったんだ。
思い返せばあたしもそういう風に取れる言動結構あったなって思ったんだよね」
苦い気持ちが心の中に浮かび上がった。
「だからってどうこうする話ではないと思うんですけど、この間言っちゃった手前、こちらもご報告までに。
先輩の幸せが一番と思ってるので、あたしも全然気にせず勝也くんと仲良くしてほしいと思ってます」
「ありがとう。ほんとにどうこうできる訳じゃないけど…一回あたしも渡辺くんと話しておこうかな」
「特に口止めはされなかったので、そこはお任せします。
とにかく、今は幸せなムードを楽しんでください!また改めてお祝いさせてくださいね!」
話が区切れたタイミングでちょうどよく会社に到着した。
さて、どうしたものか。
色々考えることも億劫なので、昼休みに渡辺くんにメッセージを送り、急遽少しだけ会社帰りに会う約束をした。
自分の行動力に少しだけ感心してしまう。