Sales Contract
お会計を済ませて外に出ると、冷たい風に包まれた。
先に外に出ていた渡辺くんは、ポケットに手を入れながらマフラーに顔を埋めていた。
「あ、ありがとうございます。ごちそうさまです」
「いやいや、大したご馳走じゃなくてむしろごめんなさい。
こちらこそ今日はありがとう」
「秋本にもよろしく伝えてくださいね。じゃあまた」
軽く会釈をするとくるっと家の方へ彼が歩きだした。
その背中が見えなくなるまで見送って、あたしも駅へと足を進めた。
半日しか離れてないのに、これほど今勝也くんに会いたくなっているのが不思議だった。
村上や渡辺くんと話して、勝也くんへの気持ちを言語化したら愛おしさが深まったのだろうか。
足早に冷たい風を切りながら駅へと向かう。
人の多い電車に足を踏み入れ、家の最寄り駅へ向かう時間ですら早くすぎないかとはやる気持ちに思わず口元がにやけた。